「…天色くんと同じ、人間じゃないのね? とっても、似てるわ」 「しかし、わからないな」 「………」 「狂った、としか思えない行動を取る者が、最近加速度的に増えている。人間より遥かに合理的な思考を持った僕達、Bクラス以上の合成人間の中にも」 「…何が言いたいんだ?」 「精神安定面で僕達には最初から、意図的に欠陥が盛り込まれているような気がしてならない」 「ここ数年の、世界的なMPLS発生数の増加とも関連があるのか、しかし、今の僕達には関係の無い話だろう」 「辻! 良かった、無事だったか! 」 「み、海影くん!?」 一瞬呆然としつつ、我に返った私は、ライトバンの荷台から身を乗り出した海影くんに慌ててしがみついた。カーブの遠心力を利用して、海影くんは私を一気に引き上げると、運転席に向かって叫んだ。 「霧間! うまく行った、頼む!」 「わかってる」 運転席から冷静な声が返ってきた。それを合図にバンはカーブを曲がり、加速していく。 世界のいたるところで、進化に関する監視、実験を続けるシステム・統和機構。 どこから現れるか知れない未来の可能性。この世界の方向性を制御しようという彼らには、現在を構成する全ての要素に意を配る必要があるのだ。 彼らの監視の対象は、当然人間のみに止まらない。手駒である合成人間たちも、同様の監視下に置かれているのだった。 同類達の進化の監視、それが彼、合成人間ナットロッカーに課せられた任務である。 「…」 「何が幸せかなんて、僕にはわからない。」 「ただ、君と、暗い顔で、一緒に沈んでいたあの時間が、今の僕の全てなんだ」 「今、思い出す事は何だい?」 |